変更ブロック追跡
Veeam Backup & Replicationは、増分バックアップを実行するときに、前回のジョブセッション以降に変更されたデータブロックを把握する必要があります。変更されたデータブロックのリストを取得するために、Veeam Backup & Replicationは変更ブロック追跡メカニズム、つまりCBTを使用します。CBTにより、増分バックアップの速度と効率が向上します。
Veeam Backup & Replicationは、次の操作にCBTを使用します。
- バックアップ
- レプリケーション
- VM全体のリストア
Veeam Backup & Replicationでは、CBTが有効化されています。トラブルシューティングの目的で、ホストレベルまたはジョブレベルでCBTを無効にできます。CBTを無効にして増分ジョブを実行する場合は、前回のジョブセッション以降に変更されたブロックを検出するためにVeeam Backup & ReplicationがすべてのVMデータを読み取るため、バックアップウィンドウが大幅に長くなる可能性があります。
変更されたデータブロックを追跡するために、Veeam Backup & Replicationは次のメカニズムを使用します。
- [Microsoft Hyper-V Servers 2012 R2以前のVMの場合] Veeam独自の変更ブロック追跡メカニズム(CBT)
- [Microsoft Hyper-V Server 2016以降のVMの場合] Resilient Change Tracking
CBTメカニズムは、ファイルシステムフィルタドライバであるVeeam CBTドライバとして実装されます。このドライバは、バックアップインフラストラクチャに追加されているすべてのMicrosoft Hyper-Vホストにインストールされます。このドライバは、CBTが有効になっているジョブでホストを初めて処理するときにアクティブになります。
Veeam CBTドライバは、仮想ディスク内の変更されたデータブロックを追跡します。変更されたデータブロックの情報は、特定のCTPファイルに登録されます。ジョブの実行時に、Veeam Backup & ReplicationはCTPファイルを使用して、前回のジョブ実行以降に変更されたデータブロックを検出し、変更されたデータブロックのみをディスクイメージからコピーします。
CTPファイルは、スタンドアロンのMicrosoft Hyper-VホストまたはMicrosoft Hyper-VクラスタのすべてのノードのC:\ProgramData\Veeam\CtpStoreフォルダに保存されます。CtpStoreフォルダには、処理されたVMごとに1つのサブフォルダが含まれ、このサブフォルダに以下のファイルが保存されます。
- CTPファイル。このファイルは、変更されたデータブロックを追跡するためにVeeam CBTドライバによって使用されます。VMのすべてのVHD/VHDXファイルまたはAVHD/AVHDXファイルに、個別のCTPファイルが存在します。
- notes.txtファイル。このファイルには、VM名やIDなどのVMの基本情報が含まれ、どのVHD/VHDXファイルで変更ブロック追跡が有効になっているかが記述されます。
Microsoft Hyper-V VMがクラスタリソースとして登録されている場合、Veeam CBTドライバはCSVのVMディスクにアクセスできるすべてのクラスタ・ノードで動作します。ジョブの実行時に、Veeam Backup & Replicationはバックアップジョブで使用するバックアップ・プロキシの一時フォルダにCTPファイルをコピーします。
- バックアップまたはレプリケーションをオンホストバックアップモードで実行する場合、CTPファイルはオンホストバックアッププロキシのロールを実行しているMicrosoft Hyper-Vホストにコピーされます。詳細については、「オンホストバックアップ」を参照してください。
- バックアップをオフホストバックアップモードで実行する場合、CTPファイルはオフホストバックアッププロキシにコピーされます。詳細については、「オフホストバックアップ」を参照してください。
重要 |
Microsoft Hyper-VクラスターのVMを処理する場合、すべてのクラスターノードがオンラインになっていることを確認してください。クラスターノードがメンテナンスモードになっている場合、クラスターノードでクラスターサービスが停止している場合、クラスターノードの電源が入っていない場合、またはクラスターノードにアクセスできない場合、CBTは動作しません。クラスターおよびSMB3ストレージのVMに関するその他の要件については、このVeeamナレッジベースの記事を参照してください。 |
Microsoft Hyper-V Server 2016以降で動作するVMには、Veeam Backup & ReplicationはResilient Change Tracking(RCT)を使用します。RCTは、VMの仮想ハードディスクで変更ブロックを追跡する、ネイティブのMicrosoft Hyper-Vメカニズムです。
RCTメカニズムは、Microsoft Hyper-V環境が次の要件を満たしている場合にのみ使用されます。
- VMがMicrosoft Hyper-V Server 2016以降で動作している。
- [Microsoft Hyper-Vクラスターの場合] クラスター内のすべてのホストがMicrosoft Hyper-V Server 2016以降にアップグレードされており、クラスター機能レベルが2016にアップグレードされている。クラスタ内のいずれかのノードがMicrosoft Hyper-V Server 2016以降にアップグレードされていない場合、Veeam Backup & Replicationは変更ブロック追跡を使用しません。
- VM設定バージョンが8.xにアップグレードされている。
RCTを使用したバックアップとレプリケーションには、Veeam Backup & Replicationは次のメカニズムを使用します。
- Veeam Backup & ReplicationがMicrosoft Hyper-Vをトリガーして処理対象のVMのチェックポイントを作成します。このチェックポイントは、バックアップとレプリケーションのデータソースとして使用されます。
- VMの処理が終了すると、基本となるVMディスクにチェックポイントをマージする前に、Microsoft Hyper-Vがチェックポイントを基準点に変換します。基準点を、ポイントインタイムのVMディスク状態を表したものとみなすことができます。
- Veeam Backup & Replicationが、増分バックアップまたはレプリケーションを実行するときに、データソースとして使用するVMの新しいチェックポイントを作成します。Veeam Backup & ReplicationはMicrosoft Hyper-Vに問い合わせて、前回のジョブセッション中に作成された基準点と現在のジョブセッション中に作成されたチェックポイントの間の増分変更を取得します。
- Veeam Backup & Replicationが、作成されたチェックポイントから変更されたデータブロックのみコピーして、増分バックアップファイルに保存します。
CBTデータの一貫性を保証するために、Microsoft RCTではCBTデータに3つのビットマップが保持されます。
- インメモリビットマップには、最もきめ細かいCBTデータが含まれます。
- RCTファイルには、インメモリビットマップよりもきめ細かさのレベルが粗いCBTデータが含まれます。VMが別のホストに移動されている場合など、通常の運用状況でインメモリビットマップのCBTデータが使用できない場合に、RCTファイルが使用されます。
- MRTファイルは、最も粗い粒度レベルです。停電やホストのクラッシュなど、通常でない運用状況でインメモリビットマップのCBTデータが使用できない場合に、MRTファイルが使用されます。
RCTファイルとMRTファイルは、すべてのVMディスクに作成されてVMディスクレベルで保存されます。
CBTのリセット(Microsoft Hyper-V Server 2012 R2以前)
場合によっては、CBTデータが破損することがあります。その結果、Veeam Backup & Replicationは変更ブロック追跡を使用してVMを処理することができません。個々のVMまたは特定のVHD/VHDXファイルのCBTデータをリセットするために、Reset-HvVmChangeTracking PowerShellコマンドレットを使用できます。詳細については、Veeam PowerShellリファレンスを参照してください。
製品アップグレードを実行すると、CBTデータがリセットされることに注意してください。アップグレード後にバックアップジョブを初めて実行するときに、Veeam Backup & Replicationは変更ブロック追跡を使用しません。代わりに、VMイメージをスキャンしてどのデータブロックが変更されたかを把握します。