フェイルバック

フェイルバックオプションを使用すると、災害復旧組織vDC上のレプリケートされたvAppから本番vAppに戻すことができます。フェイルバックを実行すると、災害復旧サイトから本番サイトに移行します。

次のいずれかのオプションを使用してフェールバックを実行できます。

  • 元のvAppへのフェールバック:このオプションを使用して、元の場所にある元のvAppにフェールバックします。
  • 別の場所に復元された元のvAppへのフェールバック:このオプションを使用して、新しい場所に復元された元のvAppにフェールバックします。このvAppは、フェイルバックを実行する前にリカバーする必要があります。たとえば、バックアップからvAppをリカバーできます。
  • 指定された場所へのフェールバック:このオプションを使用して、レプリカからリカバリされたvAppにフェールバックします。Veeam Backup & Replicationは、さまざまな設定(vAppの場所、ネットワーク設定、ストレージポリシーなど)を使用して、vAppを新しい場所に回復します。vAppは、フェイルバックプロセスの間にレプリカからリカバーされます。

最初の2つのオプションは、復旧時間を短縮してネットワークトラフィックの使用を低減するのに役立ちます。Veeam Backup & Replicationが、元のvAppまたはリカバーされたvAppとvAppレプリカとの差分のみを転送すればよいからです。3つ目のオプションの場合、Veeam Backup & Replicationは、設定および仮想ディスクの内容を含め、vAppデータ全体を転送する必要があります。元のvAppを使用することや元のvAppをバックアップからリストアすることができない場合に、3つ目のオプションを使用します。

Veeam Backup & Replicationは、フェイルバックを次の2段階で実行します。

  • 第1段階Veeam Backup & Replicationが、レプリケートされたvAppの必要なスナップショットを災害復旧組織vDCから本番vAppに転送します。この段階には時間がかかる可能性があり、特にvAppに多くのVMがあると長くかかります。Veeam Backup & Replicationがフェイルバックの第1段階を実行している間は、vAppレプリカからのVMがまだ稼動中であり、ユーザーはこれらのVMにアクセスして、通常通りに日常業務タスクを実行できます。フェイルバックの第1段階でvAppに加えられた変更はすべて、デルタファイルに書き込まれます。
  • 第2段階Veeam Backup & Replicationは、フェイルバックの第1段階でvAppレプリカに行われた変更をすべて本番vAppに転送し、すべてのプロセスをvAppレプリカから本番vAppに切り替え、レプリカを無効にします。

第2段階が開始される時間は、レプリカから本番vAppにどのように切り替えるかで異なります。本番vAppに自動的に、スケジュールした時間に、または手動で切り替えることができます。自動切り替えを選択した場合、第2段階は、第1段階の終了直後に開始されます。スケジュールした時間または手動での切り替えを選択した場合、第2段階は、希望する時間に開始されます。

元のvAppまたは別の場所に復元された元のvAppにフェイルバックするプロセスは、特定の場所にフェイルバックするプロセスとは異なります。

元のvAppまたは別の場所に復元された元のvAppへのフェールバックの仕組み

元のvAppまたは既にリカバーされているvAppにフェイルバックするときは、第1段階でVeeam Backup & Replicationが以下の操作を実行します。

  1. Veeam Backup & Replicationが、本番vAppのディスクと[Failover]状態のvAppレプリカのディスクとの差分を計算します。差分計算は、Veeam Backup & Replicationが本番vAppに転送する必要のあるデータを理解し、その状態をvAppレプリカの状態と同期させるのに役立ちます。

元の場所にある元のvAppにフェイルバックする場合に、[Quick rollback]オプションを有効にしてあると、はるかに高速に差分計算を実行できます。[Quick rollback]オプションの詳細については、「クィックロールバック」を参照してください。

  1. Veeam Backup & Replicationが、本番vAppと異なるものとして検出したデータを転送します。転送されたデータが本番vAppに書き込まれます。
  2. Veeam Backup & Replicationが、vAppレプリカの状態を[Failover]から[Ready to switch]に変更します。

第2段階の間に、Veeam Backup & Replicationが次の操作を実行します。

  1. vAppレプリカのゲストOSをシャットダウンするか、vAppレプリカの電源をオフにします。

VMware ToolsがvAppレプリカに追加されたVMにインストールされている場合、Veeam Backup & ReplicationはレプリカのゲストOSをシャットダウンしようとします。15分経っても何も起こらない場合、Veeam Backup & ReplicationはvAppレプリカの電源をオフにします。vAppレプリカに追加されたVMにVMware Toolsがインストールされていないか、vAppが一時停止されている場合、Veeam Backup & ReplicationはvAppの電源をオフにします。フェイルバックがコミットされるかフェイルバックが取り消されるまで、vAppレプリカの電源はオフのままになります。

  1. Veeam Backup & Replicationが、本番vAppのディスクとvAppレプリカのディスクとの差分を計算します。差分計算は、vAppレプリカが[Ready to switch]状態の間にどのデータが変更されたかをVeeam Backup & Replicationが把握するのに役立ちます。
  2. vAppレプリカが[Ready to switch]状態の間に変更されたvAppレプリカ上のデータを本番vAppに送信します。
  3. vAppレプリカの状態が[Ready to switch]から[Failback]に変更されます。
  4. [リカバーされたvAppにフェイルバックする場合] Veeam Backup & Replicationが、Veeam Backup & Replication 構成データベース内の元のvAppのIDをアップデートします。元のvAppのIDが、リカバーされたvAppのIDに置き換えられます。
  5. フェイルバック後に本番vAppの電源をオンにするように選択した場合は、Veeam Backup & Replicationがホスト上の本番vAppの電源をオンにします。

特定の場所へのフェールバックの仕組み

レプリカからリカバーされたvAppにフェイルバックするときは、第1段階の間にVeeam Backup & Replicationが次の操作を実行します。

  1. Veeam Backup & Replicationが、ターゲット組織vDC上にvAppレプリカと同じ設定の空のvAppを作成するようVMware vCloud Directorにリクエストします。VMware vCloud Directorサーバーが作成した本番vAppを登録します。
  2. Veeam Backup & Replicationが、vAppレプリカのデータを本番vAppに転送して、本番vAppの状態をvAppレプリカの状態にアップデートします。
  3. Veeam Backup & Replicationが、vAppレプリカの状態を[Failover]から[Ready to switch]に変更します。

2段階の間に、Veeam Backup & Replicationが、「元のVMまたは既にリカバーされたVMへのフェイルバックのしくみ」で説明されている通りに、同じ操作を実行します。

フェイルバックは、最終的な処理が必要となる中間のステップです。本番vAppが想定通りに動作しており、それに戻す場合は、フェイルバックをコミットします。vAppが想定通りに動作していない場合は、フェイルバックを取り消します。

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